アジュバント
- AKIKO SAKAI
- 2020年5月7日
- 読了時間: 3分
ワクチン・アジュバント研究センターから引用して、アジュバントを説明していきましょう。
アジュバント(Adjuvant)とは、ラテン語の「助ける」という意味をもつ 'adjuvare' という言葉を語源に持ち、ワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を高めるために使用される物質のこと。 人類史上はじめてのワクチンは天然痘に対するものだったのは有名な話。
生ワクチンから不活性化(弱毒化)ワクチンになり、今は抗原だけを使った無毒化ワクチンが主流。
接種後に体調が悪くなりやすい生ワクチン(今は使われてないけど)に比べて、無毒化したワクチンは安全性が高い。
けれど、1回の接種では十分な抗体獲得まで至らないことも多い。
さらに、ワクチン単独ではなぜかしっかりした免疫応答が得られないので、効果を高めるために必要なのがアジュバント。
現在のワクチンには必ずアジュバントが一緒に含まれています。
主流はアルミニウム塩です。
最近ではスクワレンを使ったものもあるようですね。
科学の進歩に伴って、新しいアジュバントの開発が行われています。
免疫システムを始動させる細胞の異物を認識する部位をターゲットにしたアジュバントです。
例えば、病原体のセンサーの一つである「Toll様受容体=TLR(Toll-like receptor)」に結合する病原体成分のリポタンパク質やリポ多糖、鞭毛、核酸などが候補として挙がっています。
さて、ここからは私の領域。
異物を認識する細胞、特にマクロファージや樹状細胞には、Toll様受容体だけでなく外敵を察知する受容体が備わっています。
いずれもパターン認識受容体と呼ばれていて、病原体に共通した分子や構造を認識します。
「あ~こいつは外敵だなぁ~」みたいにザクっと認識している感じ(笑)
Toll様受容体より前に発見されていたのはC型レクチン受容体。
どんなパターンを認識しているかというと、糖鎖の糖。
マンノースやフコースやN-アセチルグルコサミンといった糖。
特にマンノースを強く認識するC型レクチン受容体は、マンノース受容体と呼ばれています。
1980年代にアロエベラから単離されたアセマンナンは、マクロファージを活性化することが解明されている多糖です。
直接的な作用機序は、マクロファージ上のマンノース受容体に結合して活性化すること。
その他の作用も確認されていますが、ここでは省略。
既に1990年前後には、アセマンナンは動物用のアジュバントとしてFDAから認められています。
ワクチンのアジュバントとして使えばワクチンの効果がよりしっかりと出るのです。
(なぜ動物用かと言えば、アセマンナンは天然物質である上に、毒性が全くないので、ヒト用の医薬品としては認められませんでした。)
現在でも、アセマンナン単独のみならず、アセマンナンを含むアロエ多糖類を用いた抗ウイルス活性の研究が、in vitroのみならず、in vivoの研究でも行われています。
HIV、コクサッキー、ヘルペス、インフルエンザなどに対する抗ウイルス活性が報告されています。
アロエ多糖類単独投与、ワクチンとの併用、どちらもです。
今、世界中が新型コロナウイルスの対応に追われています。
いずれワクチンや新薬が開発され、多くの人々がホッとする日がやってくるでしょう。
でもそれは、新型コロナウイルスが既存のコロナウイルスになるだけのことであり、毎年やってくるインフルエンザやノロやロタの仲間がひとつ増えるだけのことなのです。
日々の免疫力を正常に保つことはもちろんのこと、もしワクチンを打つことになっても、アジュバントを摂取していればワクチンの効果がより良くなる可能性があるのではないでしょうか。
(これはワクチンの型がその時の流行に合っているかどうかにも因るので何とも言えませんが)
喉元過ぎて忘れるのではなく、また必ず来る感染に備えて、日々の準備を怠らないでおきたいですね。
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