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がんを考える⑦

がん細胞の社会を実社会に照らし合わせて ① ひとりひとり(細胞ひとつひとつ ② 集団形成(がんへの成長過程 ③ その集団を取り巻く地域社会(細胞間マトリックス、免疫システム に沿って話を進めています。 今回は②の集団形成(がんへの成長過程)について考えてみます。 がん細胞の増殖パターンを表す図としてGompertz増殖モデルが有名です。 図で見るように健診で発見されるがんは、億単位の細胞数になっています。 予防を考える上では、できるだけ数が少ない段階で排除したいですよね。 がん細胞がひとつできたらアポトーシスで除去するのが理想ですが、それしか手はないのでしょうか?



正常細胞とがん細胞の決定的な違いは、限られたスペースにおいて細胞増殖が止まるかどうかです。

例えば、シャーレ(細胞培養容器)で正常細胞を増殖させると1層になったところで増殖が止まります。

これは、細胞同士が触れ合うことが情報となって増殖が止まるようにプログラムされているからです。

がん細胞の場合は、他の細胞の上へモコモコとお構いなく増殖を繰り返します。

この図はヒューマニエンスQ「”がん”それは宿命との戦い」で映し出された画像です。

正常細胞と(矢印で示した)がん細胞を一緒に培養したものです。

さて、どちらの細胞が勝つでしょうか?


細胞には細胞競合という仕組みがあります。

細胞群の中に不良細胞がいる場合、周りの細胞がそれを感知して排除する仕組みです。

免疫細胞が出動するまでもなく周りの細胞が協力し合って恒常性を保つのです。

この図の場合、モコモコと増殖しようとしているがん細胞を、周りの細胞がグイグイ押し込んで、まるでニキビを押し出すようにポンと排除したのです。

ヒューマニエンスQに出演した京都大学大学院医学研究科・医学部の藤田教授は、「細胞競合には細胞間コミュニケーションが大事だ」と言っていました。

細胞同士の物理的な結合力はもちろんのこと、周りの細胞とやり取りするホルモンやサイトカインなどの情報伝達物質の分泌や、それを受け取る受容体の発現などが正常に行われることが必要になります。

実社会で考えてみましょう。

地域の安全を守るのは警察だけでしょうか?

お隣同士や町内会が友好的・協力的な地域だと、犯罪は起こりにくくなりますよね。

家庭や学校、会社でも同じことです。

がん予防は、免疫システム(警察)に頼るだけではありません。

周りの細胞(地域社会)の協力がとても大事なんです。

 
 
 

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