ビタミンCとアスコルビン酸
- AKIKO SAKAI

- 3 日前
- 読了時間: 6分
ファイトケミカルの抗酸化作用を書きましたが、抗酸化と聞いてすぐに思い浮かべるのはビタミンCです。
「ビタミンC何ミリグラム配合」というサプリメントや飲料水はあまりにも一般的です。
栄養学の変遷から始まった栄養を旅するブログを書いていてハタと気づきました。
レモンやライムが足りないから起こる壊血病、そして食べれば予防できる壊血病。
その歴史があるのに、どこからどうやって野菜や果物ではなく単品のビタミンCが重宝されるようになったのか?
調べてみたら、私の人生に掠りながら影響していました😄
「ビタミンCが足りないと壊血病になる」
栄養学に触れるとき必ずと言ってほど出てくる一文。
長期航海中の船の上や冬場に生鮮食品が手に入らない地域で猛威を振るった壊血病は、レモンやライムを食べれば解決するとわかったものの、大量の野菜を舟に積み込むのは非効率的だし、なにより当時の技術で成分を維持したまま長期間保存するのは不可能でした。
19世紀から20世紀初頭にかけて、科学界では「何が効いているのか?」を突き止める還元主義が主流でした。
「酸っぱさや新鮮さが必要だ」と思っていたものが、ある物質の不足が原因だとわかったのです。
ある物質とは、1930年代にセント=ジェルジ・アルベルトが単離したアスコルビン酸。
彼はこの業績でノーベル賞生理学医学賞を受賞しています。
生の野菜や果物は、天候に左右されて安定的な栄養価が得られません。
長時間の輸送にも耐えられません。
これでは、病院はもとより戦地や工業地帯など必要としている場所で壊血病を予防することはできません。
「安く、早く、大量に」アスコルビン酸を供給する必要がありました。
1933年、スイスの化学者タデウス・ライヒシュタインが、グルコース(ブドウ糖)からビタミンCを合成する方法を発見しました。
そしてスイスの製薬会社ホフマン・ラ・ロシュ社はいち早くその技術の特許を買収し、1934年、世界で初めてビタミンCの工業的合成に成功、ビタミンC製剤の販売を始めました。
「レモンを食べましょう」ではビジネスにならないけれど、「ビタミン剤」という製品にすれば特許がとれてビジネスになる、この段階でビタミンは農作物から商品になったのです。
たしかに壊血病はアスコルビン酸を摂取することで解決しました。
でも、壊血病の治療や予防だけでは販路が限られてしまいます。
ロシュは考えました!
「あなたは足りていない❞かも❞しれない」戦略😮
「潜在的欠乏症」概念を作り上げ、日常的に摂取する必要性を宣伝したのです。
・壊血病ではなくても歯から血が出るのはビタミンCが足りてないから
・風邪をひきやすいのはビタミンCが足りてないから
・ストレスでビタミンCは不足する
・加熱でビタミンCは壊れる などなど。。。
ビタミンは「薬」から「毎日飲むべきサプリメント」へと変貌しました。
1940年代に世界大戦が勃発し、戦場の兵士のみならず食料が充分に入手できない国民に対しても合成ビタミン剤は国を挙げて推奨されました。
さらに一般大衆に爆発的なブームを巻き起こしたのが、ノーベル賞受賞者ライナス・ポーリングの「ビタミンCを大量に摂取すれば風邪や癌を予防できるメガビタミン療法」です。
「足りていないかもしれない」戦略は、ビタミンC単独に留まらず「他のビタミンも一緒に摂った方がいい」ロジックへと展開。
忙しい現代人にとって、1日の必要量が簡単に取れるサプリメントは爆発的に普及しました。
次のゲームチェンジャーは、1994年にアメリカで制定されたDSHEA(栄養補助食品健康教育法)。
サプリメントは、医薬品のような厳しい事前審査を必要としない「食品」に分類され、効果効能は標榜できないけれど「〇〇の健康をサポートする」という表現が可能になりました。
ビタミン剤をスタートとしたサプリメントは、ハーブ、アミノ酸、酵素、その他さまざまな成分を原料とした製品が商品化されています。
そして今は、「パーソナライズ」と「天然回帰」でしょうか。
一般的なサプリメントに否定的な消費者には「あなただけのサプリメント」「合成ではなく天然の」という文句が響きます。
「合成ではなく天然がいい」という理由、まさに今回のテーマです。
植物に含まれるビタミンCと合成のアスコルビン酸は何が違うのでしょうか?
化学物質のアスコルビン酸は単一成分のビタミンCです。
側にはアスコルビン酸しかいません😥
では野菜や果物(ホールフード)に含まれるビタミンCはどうでしょうか?
食物繊維やフラボノイド、ポリフェノール、微量ミネラル、酵素、有機酸といったさまざまな栄養成分が一緒にいるフードマトリックスとして存在します。
ボッチではありません😄
アスコルビン酸単体でも抗酸化やコラーゲン合成、鉄吸収補助といった働きは期待できます。
ただし、吸収後すぐに排出されてしまうので作用は限定的になります。
一方で、フードマトリックスの一員としてのビタミンCは、抗酸化作用が持続、他の成分が再活性化を助ける、吸収効率が違う、腸内細菌にも作用するなど、働きが立体的です。

「とりあえず壊血病を防ぎたい」から始まったビタミンCですが
ぐるっと歴史を経てホールフードがいいという時代に戻ってきましたね。
フードピラミッドの変遷で書いたように、アメリカはホールフードの重要性を強調しています。
メガビタミン療法のような「療法」で使うのであればアリなのかもしれませんが
「予防」「健康維持」のために毎日摂取する形態であればホールフードであるべきだと思います。
最後にちょっと寄り道
ホフマン・ラ・ロシュの日本法人、日本ロシュ(株)は私が大卒で就職した会社です😄
現在は中外製薬になっています。 新人研修が行われた袋井工場には当時まだ大きなタンクがありました。
社内販売でアスコルビン酸100%の缶が手に入りました。
口がひん曲がるとはこの事か!と思うほどの酸っぱさで買っても消費することはありませんでしたけど。
まさか栄養成分を商業化した張本人がロシュだとは知りませんでした😱
製薬会社に入社したときには、薬は人を健康にすると思っていました。
薬を否定するつもりはありません。薬がなければ困る人にとっては必需品です。
ですが、薬を長く摂り続けると健康被害のリスクが高まることも事実です。
それは、薬が自然界にはない合成物だから。
会社を辞めてサプリメント業界に入ったことから栄養について初めて学び始めました。
人生は出会う人によって大きく変わるものですね。
私が出会った博士は、健康について細胞レベルから追及している人でした。
細胞の働きに必要な栄養は、何で、どのような形であるべきか。
生化学を専攻した私には比較的理解しやすい考え方でした。
でも、西洋医学 vs 東洋医学、合成物 vs 天然物、この違いを明確に説明できるだけのチカラは私にはありませんでした。
博士はまた、ヒポクラテスの言葉「汝の食を薬とし、汝の薬を食とせよ」を現代の科学で追及している人でした。
自然のものを加工せずそのままの形で体に取り入れるのがベスト!であることを科学的に説明できる人でした。
製薬業界から始まった私の社会人人生は、博士の後を追いかけながら続いています。
たぶん、この道は間違っていないはずです👍







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